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今週のひとこと Vol.128 「捨てない文化」


「へっつぅ~いなおし、へっつぅ~いなおし。灰はたまってございませんか」

郷土博物館祭りで聴いた「江戸売り声百景」の一節です。
“へっつい”というのは竃(かまど)のことで、竃にたまった灰を買いにくる呼び声です。

「灰屋でござ~い」

“江戸売り声師”の宮田 章司さんの声が玄関ホールいっぱいに響き、すーっと気持ちいい余韻が胸に残ります。

宮田さんの話では、江戸には究極のリサイクル文化があったとのこと。たとえばこの灰屋が買って行った灰は、農家の肥料として使われたり、紺屋(染め物屋)が藍染め染料をアルカリ性にするために使われたりしたそうです。
その他にも、鍋の底にあいた穴を塞ぐ鋳掛け屋、こうもり傘の張り替え屋、洗い張り(着物をほどいて洗濯し板に張って乾かす)屋、など生活道具の修理や手入れを生業とする人の方が、新品を売る人よりむしろ多くいたそうです。
こうなると、「リサイクル」というより、当時すでに「ごみゼロ」。捨てるものを再利用するのと、修理して捨てないという習慣が、生活の基盤にあり、それが自然に「ごみゼロ」という結果をもたらしていたのでしょう。

そんな文化が花開いた江戸の世から約150年の時を経た平成の世。社会は、ゴミを出さないどころか、ゴミを大量に生み出す文化へと移り変わり、その結果、私たちは、地球規模の環境危機を引き起こしてしまいました。そして今、大反省のもと、再び「ごみゼロ」の文化が注目されはじめてきています。

「くずぅ~い、くずぅ~い。ぼろのたまりはございませんか」

今は、呼び声まではかけないものの、ごみを収集して資源化、再利用するといったかつての生活スタイルを取り戻す取り組みが広がっています。

「ごみは市民の一生のテーマです。例えば、子育てはある一定の期間で終わるし、介護にしてもしかり。ただ、ごみだけは一生ついて回るものなのです」とは、先日の視察先、ごみゼロに取り組む町田市の職員さんの言葉です。

ゴミは一生のテーマであり、時代を経て命をつなぎながら次世代へと地球を受け渡して行く人類のテーマでもあるのです。
捨てない文化が花開いた江戸時代。ものを、そして「もったいない」の心を捨てない文化を取り戻さなければ…。

宮田さんの江戸情緒あふれる売り声を聞きながら、そんなことを思った日曜日です。

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