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今週のひとこと Vol.116 「医は仁術」


深夜、家の外でドスンという音と共に悲鳴のようなものが聞こえてきました。飛び出してみると、歩道に一匹の犬がうずくまっていました。見覚えのある大型犬です。ひき逃げにあって、負傷して動けないでいる様子。飼い主の心当たりにたずねていくと、首輪がはずれて残っていました。
それから飼い主さんと、夜間に診てもらえる病院を探して、手当たり次第電話をかけたり、知り合いに問い合わせたりすること一時間。なかなか病院が見つかりません。
そうこうしているところへ、通りかかった車から一人の男性が降りてきました。医学生ということで、「人と犬では違いますけど、医学は少しはわかるので」と、診てくれましたが、かなり急を要するという診断でした。そして自ら直接何件かの病院のドアをたたいて回り、ついに市川に夜間診療をしている動物病院があると聞いてきてくれました。
偶然出会った医学生、闇の中で時折ライトに照らし出される横顔に、たとえ犬であってもその命を救いたいという必死さ、その志の強さがうかがわれました。
ここ数年、医師不足、特に過疎地での不足や、リスクや負担の多い産婦人科医、小児科医、心臓外科医を志す若者が減っているそうです。今朝の新聞の一面にも「病院から分娩室が消える」というショッキングな記事が載っていました。

昔から「医は仁術」と言われています。この言葉は、江戸時代の儒教家貝原益軒が広めたもので、その著書「養生訓」の中に次のようなくだりがあります。
「医は仁術なり。仁愛の心を本とし、人を救うを以って志とすべし。わが身の利養を専らに志すべからず。天地のうみそだて給へる人をすくいたすけ、万民の生死をつかさどる術なれば、医を民の司命と云、きわめて大事の職務なり」
いまやその教えは、どこかへ消え去り、医は、一般的な職業のひとつになってしまった感があります。
そんな中出会った今夜の医学生さんに、希望の光を見た気がしました。「救うを以って志とすべし」その想いに向かって、頑張る彼にエールを贈りたいと思います。

<今週のひとことVol.116 2007.3.25>

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